共栄ニュース 2026年7月号 「運送業のリスク管理 正しい時間管理と賃金台帳の義務」
2026/07/03
みなさま、特定社会保険労務士のオフィスきよみ・石原清美でございます。
今回は、運送業における「時間管理の基本」について振り返ってみましょう。
1. なぜ今、デジタコが必要なのか
日頃、事業所様を訪問した際、まずは「運行記録計は何を使用されていますか?」と伺います。最近では、共栄システム様とタッグを組んでスムーズに導入が進むケースが多い一方、いまだに「アナログのチャート紙」を使用しているところも見受けられます。
理由を伺うと、「デジタコだと拘束時間や長時間労働がすぐに可視化されて困るから」とのことでした。しかし、チャート紙であっても時間は確認されてしまいます。費用面を懸念される場合は、トラック協会や行政の助成金・補助金を利用できます。必要性を強くお伝えしたところ、重要性をご理解いただき、早速導入を決めてくださった企業もありました。
デジタコによる「数字の見える化」は、管理者の業務を大幅に合理化します。すでに導入されている企業様も、ただデータを印刷してファイルするだけでなく、業務改善の武器としてぜひ有効活用してください。
2. 「他人事ではない」未払い賃金請求のリスク
最近、運送業界で多発しているのが「賃金の未払い請求」です。「うちは大丈夫」とおっしゃる会社でも、いざ確認すると、昔ながらの時間管理のままで計算漏れが見つかるケースが少なくありません。
実際にドライバーから請求されると、地場輸送で数百万円、長距離輸送では500万〜1,000万円にのぼることも珍しくありません。私はこうした訴訟の立ち合いを幾度も経験してきましたが、正しい時間管理を行うことこそが、最大のリスク管理になります。
【労働時間の基本算式】 終業時刻 - 始業時刻 = 拘束時間 拘束時間 = 労働時間 + 休憩時間

出典:『中小企業のためのトラック運送業の時間外労働削減の実務・補訂版』石原清美(2024)
3. よくある「大きな勘違い」と賃金台帳の義務
「1日の所定労働時間が8時間の場合、それを超えた1カ月のトータル時間に一律で割増賃金率(125%)をかければよい」という大きな勘違いをされている事業所様がありました。また、賃金規程・給与明細・賃金台帳の間で、手当などの名目がバラバラになっているケースも散見されます。
特に注意すべきは「賃金台帳」です。労働基準法第108条により、賃金台帳には金額だけでなく、労働時間・時間外労働時間・深夜労働時間・休日労働時間の「時間数」を必ず記載する義務があります。これを行っていない場合は労働基準法違反となり、是正勧告の対象となります。
「絶対に大丈夫」と過信せず、この機会に一度、専門家に正しい時間管理ができているかチェックしてもらうのも、リスクを未然に防ぐ有効な方法です。
著者:社会保険労務士事務所オフィスきよみ 石原 清美
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